広告における訴求技法としての情緒訴求
広告における訴求技法(アピールのしかた)には様々なものがありますが、それらの中に、受け手の感情に訴えかける方法があります。情緒訴求または感情型訴求と呼ばれています。そして情緒訴求には、恐怖を感じさせるもの、ユーモアを感じさせるもの、懐かしさを感じさせるものなどがあります。これらの中で、昔から多くの研究が行われてきたのは、恐怖訴求とユーモア訴求です。そこで、恐怖訴求とユーモア訴求に目を向けてみることにしましょう。
恐怖訴求
恐怖訴求とは、特に、健康、病気、事故などに関する恐怖の感情を喚起し、そのブランドを使えば、あるいは、そのメッセージに示されていることをすれば、解決するということを示す訴求技法です。例えば、歯磨きをするときに、歯垢まで取らないと虫歯や歯周病になる可能性があるけれど、我が社の電動歯ブラシを使えば大丈夫であるということを示す広告は、恐怖訴求を用いていると言えます。ただし、中程度の恐怖を喚起することが大事です。恐怖が大きすぎると、受け手がメッセージを避けてしまうかもしれないからです。
ユーモア訴求
ユーモア訴求とは、ユーモアを用いた訴求技法です。ユーモア訴求は、注意を引く、広告や商品に対する好意的な態度の形成を促す等の特徴がある一方で、ユーモアとは関係ない部分から受け手の注意を逸らせてしまう、説得効果が高いとは言えない、商品に関する記憶は良くない等の特徴があることも指摘されています。
ユーモア訴求の影響を調べた研究
ここで、ユーモア訴求に関してハンセン他(Hansen et al., 2009)が行った研究を見てみましょう。ユーモア広告が商品情報の記憶を鈍らせるかどうかを明らかにした研究です。ハンセン他は、ユーモア広告を見てもらう条件とユーモアを含まない広告を見てもらう条件を設けて実験をしました。そして、広告におけるユーモアは、広告の記憶を高めるけれど、商品の記憶は損ねるという結果を得ました。
