授業編

英文読解の科学:英文を「理解する」ってどういうこと?

文芸学部 英文学科

細田 雅也 准教授

英文読解とはなにか

英文を「理解している」とはどのような状態でしょう? 例として、以下の英文を考えてみましょう。何ができれば下線部を「理解している」と言えるでしょう?

Once upon a time, four little rabbits lived with their mother. Their names were Flospy, Mopsy, Cotton-tail and Peter.
One day their mother said, “When you go outside, never go into Mr. McGregor’s garden. When your father went there, Mr. McGregor caught him and put him in a pie.

NEW CROWN 2 (根岸他, 2016)

和訳できれば英文を「理解している」と言える?

この下線の文を「お父さんはマクレガーさんに捕まって、パイに入れられた」と和訳するのはあまり難しくないでしょう。しかし、この英文が伝えたいのは、「お父さんが捕まってパイに入れられた」という直接書かれていることではなく、そこからほのめかされる「庭に入ったお父さんは駆除されてしまった(だから、庭に入らないようにしましょう)」ということだと考えられます。先ほどの和訳は、英文から暗示されるこの内容を表していません。このことから、英文を「和訳できる」ことは、英文の内容を「理解している」ことを必ずしも意味しないと言えます。

英文の「言いたいこと」を理解する

このように、英文を「理解する」という行為は、英文が直接「言っていること」を解釈することだけに留まりません。英文読解の本質はむしろ、直接書かれていないことも含めて、英文が全体として「言いたいこと」を理解することにあると言えます。では、私たちは英文読解をどのように学習・指導すべきでしょう? もちろん、語彙や文法の知識をつけて、英文が「言っていること」を捉えられるようにすることは必要です。しかし、それだけでは十分ではありません。

英文読解のゴールは筆者が伝えるメッセージを読み取ること

英文を理解するには、英文から暗示されるメッセージを推論したり(例 ウサギはパイに入れられると生きられない → お父さんは駆除された)、英文の内容を自分の知識と関連付けたりして、英文が全体として「言いたいこと」を捉えることが求められます。よって、英文読解の学習・指導においても、英文が「言っていること」を把握するのはあくまで出発点です。英文自体を超えて、筆者が英文を通して「何を言いたいのか」を理解することをゴールに定め、それに向けた読解をトレーニングすることがポイントです。

高校生へのメッセージ

担当する英語教育学・応用言語学ゼミの様子をインスタグラムに投稿しています。ぜひご覧ください。
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