ポピュラーソングから習得する、深い英文理解力
英文が何を言わんとしているか分からないまま、とりあえず訳し終えるだけとなってしまった――そんな苦い経験をしたことはありませんか。直読直解が理想とはいえ、黒いインクの染みを目で追うだけの眼球運動に終わってしまったこと、ありませんか。英文を現代文と同等のレヴェルで理解し、内容に肉薄したコメントできることが社会では求められています。そうした深い英文理解力を習得するためにこそ、身近なポピュラーソングを素材に英文翻訳の勉強をしてみましょう。
文意を理解し、一読で分かる日本語として表現するのが翻訳
誤解があってはいけないので申し上げますが、英語の単語を日本語に置き換えるだけの逐語的、機械的な英文和訳は、翻訳ではありません。まず、文意を徹底的に深く理解し、その上で読者が一読でスラスラ頭に入る、達意の日本語として表現することが、翻訳者の使命。翻訳の勉強をすることで、英文を深く理解する力が養われます。
直訳では伝わらない、不慮の死を遂げた息子への想い
Alicia Keys の “Perfect Way to Die” という2020年に発表された楽曲で、And you know I'm horrible at saying goodbye と唄われます。be horrible at ~が「~が苦手である、下手である」という熟語を除けば、この歌詞には難解な単語はありません。しかし、だからといって、「あなたは私がお別れを言うのが下手であることを知っている」と訳してみても、文意がまったく伝わりません。そもそも日本語が不気味なまでに不自然。2012年、近くのコンビニに買い物に出掛けたトレイヴォン・マーティン少年が射殺されたことを検死官からの突然の電話で知った母親の慟哭の言葉であることが理解できてはじめて、「それに知ってるでしょ、わたしがお別れするの、大の苦手だってこと」と翻訳することが可能となります。
歌詞の背景を知ることは、社会を知ること
また、この楽曲がアフリカ系アメリカ人に対する差別に抗議する Black Lives Matter という社会運動のさなかに作られたものであることを知ることで、楽曲の理解がさらに深まることでしょう。英語を通して、あなたは世界を知る。そして、世界を知るために、活きた英語を学ぶ必要性を感じることでしょう。さあ、日々変化を遂げる現代社会を知るためにも、本格的な英語力を習得しましょう。