新しい価値を生み、社会を変える
イノベーションは20世紀前半に活躍した経済学者、ジョセフ・シュンペーターによる言葉で、新結合と訳されます。物事の新しい組合せを意味し、組合せが新しければ既存の物事同士の組合せでも構いません。ちなみにスティーブ・ジョブズが初めてiPhoneを紹介した際、「電話と音楽プレイヤーとインターネットを融合したもの」と説明しています。スティーブ・ジョブズはイノベーションをよく理解していたのでしょう。
企業が起こすイノベーションの目的は?
さて企業は何のためにイノベーションを起こすのでしょうか。利益を得るためという答えで良いと思います。では誰のために利益を追求しているのでしょうか。これは意外と難しい問いです。第一義的には株主のためですが、企業には社長・従業員・取引先・地域社会etc.といったステイクホルダー(利害関係者)が存在するからです。株主以外のステイクホルダーを重視し過ぎると、株主利益に反するなどと批判される場合もあります。
社会にポジティブな影響をもたらすには
しかし、企業が社会に貢献する、言い換えれば、企業が社会的価値を創出するのは、悪いことでしょうか。むしろ社会の一員として社会貢献をすることは、企業の存在意義(パーパス)であるとも言えます。世の中がより良く変化をしていくことで、株式会社制度の枠組みも少し古くなっていたようです。そこで近年では企業目的(ミッション)に照らし、株主の合意が得られるならば、社会的価値の創出のために経営資源を投入しても良いとされています。
イノベーションで社会課題を解決する時代に
例えば、キリンは東日本大震災の時、被災した福島県農家の果物(梨)を積極的に購入し、これを缶酎ハイに加えて売り出しました。このビジネスモデルは後の熊本地震でも用いられ、今度は被災した熊本県農家の果物(みかん)を購入して、熊本の農家の支援に活かされました。このように企業が社会貢献の観点から経営資源を投入することが容認される時代に変化しています。今日、イノベーションは社会的価値の創出と新たな全体最適の実現に役立てられています。