「特殊詐欺」とは?
「特殊詐欺」とは、犯人が電話や手紙で親族や公共機関の職員等を名乗って被害者を信じ込ませて現金をだまし取る、医療費の還付金が受け取れるなどと言ってATMを操作させ犯人の口座に送金させる、などの手口をその典型例とする、犯罪の現象面に着目したカテゴリーです。刑法上の犯罪としては、詐欺罪・恐喝罪・窃盗罪などの成立が問題となります。
詐欺罪の成立要件
刑法246条は、「人を欺いて」財物を交付させた・財産上不法の利益を得た場合を詐欺罪と定めており、行為者の欺く行為により相手方が錯誤に陥って財産交付を行いその結果財産が移転する、という関係性が求められます。近時の特殊詐欺は、複数人の分担で遂行されることが多く(「かけ子」(電話をかける役)「受け子」(お金などを受け取る役)「出し子」(振り込まれた金銭を引き出す役)による役割分担など)、自ら行った実行行為につき責任を負うという刑法上の原則からすれば、それぞれの関与者の行為が単独では詐欺罪の構成要件を充足しませんが、実行行為の分担は一部分でも犯罪計画の全容を把握していれば詐欺罪の「共犯」として処罰される可能性があります。
だまされたふり作戦
被害の多発を受けて、犯人検挙のための新しい捜査手法も導入されています。「だまされたふり作戦」とは、だまされたことに気付いた、あるいはそれを疑った被害者側が、捜査機関と協力の上、引き続き犯人側の要求通り行動しているふりをして、受領行為等の際に犯人を検挙する捜査手法です。最高裁判所はこのような場合に詐欺未遂罪の成立を認める判断をしています(最決平成29年12月11日刑集71巻10号535頁)。
被害防止・被害回復の取り組み
被害者にとってのダメージは金銭的損害にとどまらず、だまされたことで人間不信に陥るなど心理的なダメージもあるでしょう。行為者の処罰は事後的な手立てにすぎず、事件を未然に防ぐことが何より大切です。日頃から家族と特殊詐欺について話す機会を持つなどして、犯人に急かされて騙されないようにしましょう。また、金銭的な被害については、振り込め詐欺救済法が定める手続により、制約はあるものの被害回復分配金の支払いを受けられます。万一被害にあった場合には、警察や振込先金融機関に連絡するなどしましょう。