授業編

破壊+創造=イノベーションには、守護者が必要だ

社会イノベーション学部 政策イノベーション学科

積田 淳史 准教授

創造的破壊とは何か

イノベーションという概念を創り出したシュンペーターは、イノベーションの本質は創造的破壊(creative destruction)だと指摘しています。創造と創造的破壊の差異は、ある情景を思い描けば、すぐに理解できます。 2人の子どもが、小さな紙にお絵かきをしています。クレヨンが走るたびに余白は小さくなっていき、やがて全面が埋まります。Aちゃんはクレヨンを色鉛筆に持ち替えて、木々の葉や陰を細かく描きました。これが創造です。Bちゃんは小さな紙を放り投げ大きな紙を貰って、大きな絵を描き始めました。これが創造的破壊です。どちらが良いかは議論が分かれますが、どちらが大きいかは議論の余地なくBちゃんの描く絵でしょう。シュンペーターは、Bちゃんのように既存のものごとを破壊し、その上に新しいものごとを創り上げることが、社会や経済に発展をもたらすと論じました。

破壊を志す者を守る重要性

創造的破壊は、創造よりもずっと大変な仕事です。社会や経済の旧い仕組みや文化を破壊することは、自分の描いた絵を放り投げることとはスケールが違います。そこで大切なのが、守護者(チャンピオン)と呼ばれる存在です。イノベーションを志す者は、破壊を嫌う人々から抵抗を受けます。その抵抗を受け止め、なだめ、時に両者を仲介する守護者の存在は、特に既存企業がイノベーションを志す際に不可欠な存在です。組織の中から組織の破壊を志すのですから、しっかり守り育てなければイノベーションの種は芽吹くことさえないでしょう。

イノベーションに必要なポイントを見極める

せっかく描いた絵を放り投げる行為は、多くの人々にとって許せない行為でしょう。その行為に手を貸し、その行為の大切さを人々に説く守護者が居なければ、大きな絵が生まれることはありません。イノベーションが足りないと思うなら、創造的破壊を志す人が足りないのか、それとも、見守り育てる守護者が足りないのか、見極めることが大切です。みなさんは、どちらが足りないと思いますか?

高校生へのメッセージ

勉強よりも大切なことがあるから、勉強は大切です。大切なことに寄り添うために、勉強が役立ちます。寄り添いたい何かを見つけることにも、勉強は役立ちます。頑張ってください。

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