新型コロナウィルスとアメリカ社会
新型コロナウィルスは私たちの日常に大きな影響を及ぼし続けています。コロナ以前から貧富の格差が拡大していたアメリカ社会では、貧富の格差という問題が、経済的側面にとどまらず、健康や命の格差をももたらしていることが明らかにされてきました。そして、このように、もともとあった格差問題という社会の歪みが、新型コロナウィルスの感染拡大で、より深刻化していると指摘されているのです。では、日本社会ではどうでしょうか。子どもの貧困に焦点をあてて考えてみたいと思います。
「豊かな社会」の「新しい貧困」
現代の日本社会では、食べることもままならず肉体・生命を維持することができないといった意味での貧困(=絶対的貧困)はおおむね解消されたものの、「豊かな社会」の「新しい貧困」として、相対的貧困の問題が顕在化しています。相対的貧困とは、社会のほとんどの人々が享受している生活様式や慣習、そして社会参加等を行うことができない状態であり、社会における標準的な生活水準との格差を示しています。
日本社会と子どもの貧困
2017年国民生活基礎調査によれば、貧困状態にある家庭の17歳以下の子どもの割合を示す貧困率(等価可処分所得中央値の50%に満たない所得水準にあるものの割合)は13.9%で、実に約7人に1人の子どもが貧困状態にあり、ひとり親世帯の貧困率は50.8%にも及んでいます。多くの子どもたちが、経済的理由により、学習環境を整えることができない、学校行事への参加や進学を断念せざるをえないなど、まわりの人たちにとっては「ふつう」の生活を営むことができない状況にあるのです。
社会的課題としての子どもの貧困とアフターコロナの社会
新型コロナウィルス感染拡大により、こうした子どもたちの生活状況は、家庭の更なる困窮化の中で、厳しさを増していることが調査報告やメディア報道などにより示されています。将来、社会の支え手となる子どもたちの貧困問題は、結果的に、大きな社会的損失をもたらします。また、ひとり親世帯は増加しており、離死別などによりひとり親世帯の成員となる可能性は誰にでもあるのです。つまり、格差問題は、単なる個人的な問題ではなく、社会的な課題だといえるのです。
私たちが、外出自粛や新しい生活様式が求められる中で経験した痛みやリスクは、自分とは異なる立場にある人々の痛みやリスクを共感的に理解していくうえでの重要なヒントになるでしょう。コロナ禍によりあらわになった格差問題は、アフターコロナの社会の構想にあたり、私たちはどのような仕組みや役割分担で支え合うべきなのかという課題を提示しているのです。