金融から人間の活動を横断的に見る
皆さんは「金融」にどのようなイメージを持っていますか。多くの人は“お金”を挙げるのではないでしょうか。中には“拝金主義”のイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、本来の金融は人を幸せにするためにあります。あくまで使う側の問題です。現代の金融は、ほぼあらゆる経済・社会活動につながっています。時に世界経済をどん底に突き落とす引き金にもなりますし、パンデミックや自然災害などではセーフティネットとして大きな役割を発揮します。人類の活動を横断的に見る上で、金融は極めて有効な視点です。
金融システムが社会に及ぼす2つの効果
「直接金融」と「間接金融」を基本骨格とする現代の金融は、長い歴史を経て練り上げられた精緻な仕組みです。そして金融システムが社会に及ぼす効果は、「資金の移転」と「リスクの移転」の2つに分けられます。前者の「資金の移転」は、お金を借りることで、現在の所得に縛られず支出ができることを意味します。後者の「リスクの移転」は、一人で負い切れない新規ビジネスなどの大きなリスクを、出資者らと分担して負担するような効果です。いずれも社会全体としてみれば、経済をより活性化する方向に働きます。
私たちのイノベーション活動を支える金融
政府は金融市場を通じて多額の借金をしながら予算を組んでいます。その予算には科学技術研究費も含まれます。最先端の研究も、意識しないところで金融に支えられている側面があります。同様のことは企業経営や個人の生活にもあてはまります。金融が無ければ、我々のイノベーション活動の自由度は格段に下がります。金融は私たちの活動範囲を格段に広げてくれます。それは「イノベーション」、すなわち我々の創意工夫による変革の活動を促す力も持っています。
社会に与える影響がますます大きくなる金融
そして現在、金融そのものにもIT技術の進歩などに基づく急速なイノベーションが進んでいます。その行方は、社会全体のありようにも大きな影響を及ぼすと私は考えています。そんなわくわくするような金融や社会の現在・未来を、成城大学で若い皆さんと一緒に考えていきたいと願っています。