現在のファッション業界が直面する課題とは?
近年のファッション業界では、素材生産から製品使用までの全サイクル(サプライチェーン)を見据えた気候変動対策が求められています。ここでは生産者が取り組んでいる試みと、消費者ができることについてとりあげます。
温室効果ガスの主要排出源である、ファッション業界の実態
2015年にできたパリ協定で、産業革命以後の気温上昇を+1.5℃に抑えようとする目標が掲げられ、各国政府・経済界・市民社会をあげての取り組みが本格化しています。なかでも産業革命の先導役であった衣料部門は、製品サプライチェーンを通じて、全世界の温室効果ガスの排出量のうち、約5%を排出しているため、積極的な対策を講じようとしています。
生産工程の革新で温室効果ガスの排出量を削減
具体的に現在の衣料業界は、製造工程、製品の輸送・販売、製品使用の各段階別に温室効果ガスの排出量データをきめ細かく分析するとともに、いかなる方法であれば、経済的なコストを相対的に安くしつつ、温室効果ガスの排出削減を達成できるかを模索しています。
分かりやすい事例をあげましょう。例えば、綿製品の原料となるコットン(綿花)ですが、現状、栽培のために石油由来の化学肥料や農薬を大量使用する結果、たくさんの温室効果ガスを生産工程で排出しています。そこで化学肥料や農薬の使用を抑えたり、廃止したりすることで、オーガニック・コットンへの栽培転換が進んでいます。また石油由来の化学繊維(ポリエステルなど)をバイオマス由来のものに転換する取り組みも始まっています。
ファスト・ファッションから脱却し、持続可能な生産と消費へ
こうした生産者側の取り組みは、大量の衣料製品を安く・早いサイクルで製造して使用するファスト・ファッションからの脱却を目指すものです。生産者側の取り組みの成否には、消費者の行動も大きく関係しています。現状、オーガニック・コットン製品も、バイオマス・ポリエステル製品も、大量生産や早い流行サイクルでの流通にはいまだ不向きです。そこで中古品市場・レンタル市場を活用しながら、衣服をくり返し・長く使用することで、結果的に全体の衣服消費量を減らすことが消費者にも求められています。