授業編

コロナ感染症をきっかけに振り返る環境の経済史

経済学部 経済学科

青木 健 准教授

コロナ禍で変化した経済活動が与えた影響

このところ、コロナ感染症(コロナ禍)対策をきっかけに経済活動のやり方が、期せずして変化しています。ある分析によると、コロナ禍への対処策で工場・オフィスなどの活動の制限や変化で、温室効果ガスの排出が減ったとされています。経済活動のやり方が地球温暖化を促進したり、そのスピードを減速させたりする関係が、分かりやすい実例で示されたといえるでしょう。

温室効果ガス排出を進めることになった貿易量の増加

温室効果ガスの排出増で温暖化が進んだのは、特に20世紀半ば頃からと言われています。第2次世界大戦が終わり、平和的な通商関係が回復し、貿易量が劇的に増えたことがきっかけです。巨大な貨物船・タンカーで、かさ張る貿易品が大量に輸送される過程で、化石燃料の消費と排気ガスの大放出がなされたからです。その犠牲と引きかえに、人々は「お金さえあれば」、思い通りに世界中から食糧・燃料・産業の原材料を輸入し、その恩恵をうける経済生活を送ってきました。

コロナ禍で日本経済の問題点も明らかに

21世紀の昨今まで、この経済生活は、その中で払われた犠牲に人々の注意が向くことなく、続いてきました。ところが、コロナ禍の下での現在の生活の変化は、その犠牲に関心を向けるきっかけをもたらしました。マスクの供給の例だけを考えても、日本はそれを意外なほど輸入に頼っていた点、一度そうした必需品をめぐって、世界中で争奪戦が起こると、日本はその調達に困る国である点が明らかになりました。「お金さえあれば」といっても、そもそも日本経済では、「モノを調達(購買)してくる力」が落ちていること、その条件を満たしたとしても、必需品を調達するには、時間とコスト(温室効果ガスの排出を含む)がかかることが実例をもって示されました。

経済史の中に新しい経済生活へのヒントが

こうした問題が表面化する中で、コロナ禍後の新しい経済生活のあり方を考えることは、容易なことではありませんが、これからの世代が向き合わなければならない課題です。大学生は、その先頭に立たなければならないと思います。経済史は、そのヒントを得るために学んだ方がよい経済学の分野の一つです。

高校生へのメッセージ

人と違った視点や考え方を持つことを恐れないでください。成城大学には、私も含めて、そうした学生にまじめに向き合おうと努力する教職員がそろっています。

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