イスラム教創始者の諷刺画掲載により起こった襲撃事件
近年、フランスは、イスラム過激派によるいくつかのテロ事件を経験しました。その発端となったシャルリー・エブド社襲撃事件は、同社が発行する新聞が、イスラム教の創始者の諷刺画をたびたび掲載したことを巡って引き起こされたものです。
襲撃事件が映しだすフランス社会の問題
テロ行為は許されるものではありませんが、この事件は、現代のフランス社会が抱える問題を映しだしています。実行犯となった若者たちは、その後起こったテロ事件と同様に、フランスの旧植民地からの移民の子孫としてフランスにおいて、フランス人として育った人たちでした。彼らが過激思想に走る背景として、彼らが抱える学業の失敗や深刻な失業問題があるとされています。
平等に関するフランスの特殊な考え方
彼らがフランス社会に溶け込めない背景には、平等に関するフランスの特殊な考え方があります。フランス革命で特権階級の特権を廃止して、人民中心の国を打ち立てたフランスでは、平等は宗教や出自という個人の属性を考慮しないところで成立するものでなければならないとされます。社会的に有利に働く属性だけでなく、不利に働くと考えられる属性についても、考慮して、特別扱いするのは不正だとされます。この考えがあるために、人種問題を抱えるアメリカのように、少数派を教育や就職において優遇するというような対策がとりにくいのです。
事件の背景を知り、過激思想に走る理由を考える
表現に対する暴力が許されないことは言うまでもありませんが、フランス社会に不満を抱える人たちが心の拠り所とした宗教を揶揄したことが、事件の背景にあることを忘れてはなりません。過激思想に走る理由を考える必要があります。諷刺は、ライシテ(政教分離)の国フランスにおいて、宗教的な主張をやめないイスラム教徒という文脈で行われたものですが、もともとライシテは、強大な影響力を持っていたカトリック教会を排除するために確立された理論です。これがマイナリティーの排除の正当化に使われることがあってはなりません。