授業編

イメージを読み解く:西洋美術史への招待

文芸学部 芸術学科

高橋 健一 教授

まずは、PCからローマのナヴォーナ広場へ

得体の知れないウイルスのせいで移動の不自由なこんにちですが、せめて気持ちだけは自由でいましょう。手元のPCを開いて、Google Mapでイタリアのローマに飛んで、中心にあるナヴォーナ広場に降りてください。真ん中に大きなモニュメントが立っていますね。小さな画面を通して見てもその威容には圧倒されてしまいます。街の真ん中に唐突に置かれた巨大な白い石の塊からは大量の水が噴き出し、なぜか上には高いオベリスクが載せられています。

観察して気づく、不思議な組み合わせ

でも、よく観察してみましょう。実はいろいろなものが表わされています。まず目につくのは頑強な男たちです。岩に座った彼らは、太い櫂(かい)を手足で操ったり、頭を布で覆ったり、掌を上に向けて仰け反ったりしています。さらに間をみると、馬やライオン、大蛇、竜、そして鱗状のものに覆われた生物がいたり、棕櫚(しゅろ)の木やサボテンがあったりするのに気づくでしょう。なぜこんなものが組み合わされたのでしょうか。

《四大河の噴水》から生まれる疑問

この構造物は《四大河の噴水》と呼ばれています。と聞いても、すぐには納得できない人が多いかもしれません。人物像は世界の4つの大河を表わすというわけですが、どうしてそうなるのでしょう。彫刻は17世紀バロック美術の巨匠ベルニーニの作品です。なぜこんな主題が作品に選ばれたのでしょう。人物の身振りはとても大げさですが、なぜこうなったのでしょう。そもそもなぜこんなに大きな噴水がつくられたのでしょう。周りには今もたくさんの人が集まっていますが、噴水はどうやって見られ、使われてきたのでしょう。

イメージを読み解く、美術史学

人間が過去に創り出した作品から生まれるこうした疑問に答えていくのが美術史学です。《四大河の噴水》の一部をなすオベリスクの頂上には小枝を咥えた鳩のブロンズ像があります。これを「かわいい」と思うのも、「鳥は苦手」と嫌がるのも、「鳩だから平和の象徴なのかな」と考えるのも、もちろん自由です。でも、適切な情報を手に入れて理解が深まると、イメージがまた違って見えてきます。そんな体験を皆さんと一緒にできれば、と思っています。

高校生へのメッセージ

私の専門はイタリア美術史ですが、本学の芸術学科には他にもフランス美術史、東洋・日本美術史、演劇学、映画学、音楽学、美学の研究者がいますから、芸術や感性の問題について幅広く学ぶことができます。

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