フィールドワークを通して実態を調査。
社会人経験での気づきを研究でひもときたい。

文学研究科 日本常民文化専攻 博士課程前期
中川 桜さん

成城大学 出身

専門的な3分野の教育が充実する専攻。
先生方への相談が進学の後押しに。

2020年3月に成城大学を卒業した後、農業関連のメディアで取材や編集の仕事に従事しました。ちょうどその頃、社会では新型コロナウイルスの流行によってこれまでの常識が大きく変わり、あらゆる分野で新たな試みが生まれていました。目まぐるしく変化する生活スタイルが、やがてニューノーマルとして定着していく渦中に身を置いたことで、社会人として業務に取り組む傍ら、変化を続ける人々の考え方や日常についてじっくり考えてみたいと思い、大学院進学を検討するように。卒業後しばらく大学を離れていましたが、先生に連絡を取ると、学生時代のゼミの先生をはじめ、専攻の先生方が親身になって相談に乗ってくださり、さまざまな話を聞くことができました。日本常民文化専攻では、日本史学・民俗学・文化人類学の3分野の授業が豊富にあり、各分野の第一線で活躍する学外の専門家の方も授業を担当されるので、充実した大学院生活を送ることができると感じ、進学を決意。大学独自の奨学金制度を利用することで、学費の負担を軽減できる点も大きな魅力でした。

人口減少に対する社会全体と
地域での捉え方の乖離に迫る。

現在、山梨県南巨摩郡や長野県下伊那郡にある町・村を対象に、人口減少が進む地域を民俗学の方法を用いて研究しています。学部生時代の卒業論文で十分に掘り下げられなかった点をさらに探究することが目標で、先生方からほかの地域の事例を教えていただくこともあり、対象範囲が拡大する可能性もありそうです。人口減少の事象は近年、高齢化や過疎化などの社会問題として大きな関心を集めていますが、果たして現地に住む人たちも同様の認識を持っているのだろうか、という疑問が研究の出発点です。人口減少が社会問題化する以前から、戦争や飢饉などを要因とした人口減少はあちこちで起こっていました。地域社会はこうした状況に独自に対応してきた歴史がありますが、ここ最近は社会全体の問題として国の施策や法律で解決に導こうという考え方が主流です。研究では、このような考え方がどのように形成されていったのか、また、地域によっては、国や社会の介入を望んでいない場合もあるのではないか、そんなことを独自の視点で解明していければと考えています。

先生や学生との議論で磨かれる視点。
研究者として求められるレベルを目指す。

民俗学の特徴は、フィールドワークを重視し、実際に地域に入って調査を行うところ。人々の生活様式や価値観がどのように形成され、変遷してきたのかを考察するためには、多角的な視点を持っていることが大切です。私自身、企業での勤務経験から得られた視点が、研究の一助になっています。また、大学院では、学生であると同時に研究者としてもみなされるので、求められるレベルが上がります。本専攻の授業は、学生自身が発表準備をして、先生やほかの学生と意見を交換するゼミナール形式です。主体的に授業に参加し、質疑応答の中でしか知り得ない事柄も数多くあり、1時間半の授業があっという間に過ぎてしまいます。各々の研究トピックを深く考察できる点は、大学院の醍醐味ではないでしょうか。修了後は、大学院で培った調査方法や研究者としての姿勢を活かし、どんな形であれ研究を続けていきたいです。

※記事内容・写真は2025年取材時のものです。