高校3年生になる頃にコロナ禍が始まり、さまざまな行事が中止になって気持ちが塞いでいた時、私を救ってくれたのは、テレビに出ていたアナウンサーの「明日は今日よりも感染者数が減るかもしれないので、がんばりましょう」という前向きな言葉。メディアにはエンターテインメント的な面白さ以上の価値が秘められていると感じ、深く学んでみたいと興味が湧いてきました。当時通っていた塾のチューターの方が成城大学に通っていて、「マスコミュニケーション学科、面白いよ」と紹介してくれたのが、志望したきっかけです。
印象に残っている授業は「マスコミ特殊講義Ⅴ」です。先生がNHKでプロデューサーをしていた経験をもとに、制作者の視点から、ドキュメンタリーが作られる過程を教えてくれる授業です。番組や企画のテーマとは関係なさそうな映像や写真にも焦点を当てることで、情報に深みが増すため、あらゆる素材が貴重で使うべきものだということを知りました。私はもともとアナウンサーを目標にしていたのですが、この授業を受け、番組を作る上でのルールや社会を変えていく意義を知ったことで、制作側への興味が大きくなりました。
私が所属しているコミュニケーション論的社会研究演習では、インタビューやフィールド観察の方法に関する文献や作品に触れ、批評や疑問を持ち寄って検討しています。例えば、映画『羅生門』を視聴し、「全知全能の神の視点から真実を語ることは可能なのか」というテーマで話し合った時には、たとえ全知全能でも都合のいいことを言う可能性があるから、インタビューに頼り過ぎるのは良くないのではないかという意見が出ました。卒論では部活で乗っているヨットの相互行為分析を行い、どのような行為が良い結果につながるかを確かめようと思っています。
現在は、自ら取材をして制作したコンテンツを届ける仕事がしたいと考えています。大きなニュースにかき消されてしまうような小さな事件に関する声や、マイナースポーツで努力されている人の姿など、些細なことでも大切に取材して、届けられる人になるのが目標。さまざまな授業の中で取ってきたメモが大きな力になると思っています。また、相手の気持ちや視点に立って情報を伝えられるようになるため、授業で登場するトピックについて「自分だったらどのように行動していたか」を常に考えるようにしています。
※記事内容・写真は2023年取材時のものです。